- 10月頃
- 貝の買い込み・貝の受け渡し

- 真珠養殖業者が自分達でアコヤ貝を育てないのは、分業制にし、仕事に集中して取り組むため。
「母貝(ぼがい)養殖業者」は強くて死なない貝を作るために一生懸命努力します。「真珠養殖業者」はきれいな真珠を作るために努力します。 分業制にすることで、それぞれ良い成果を生み出すことができるからです。
愛媛県の真珠養殖関係の業者は2種類ありまして、私達は真珠を養殖する「真珠養殖業者」ですが、その真珠を作るために使われるアコヤ貝は養殖していません。アコヤ貝は「母貝(ぼがい)養殖業者」といわれる真珠の養殖専用のアコヤ貝を育てる業者がいて、その母貝養殖業者が、約1〜2年育てて大きくしたアコヤ貝をこの時期に大量に買い込みます。ここからが、私達「真珠養殖業者」の仕事になります。
- 10月頃
- 貝のかご詰め作業(抑制作業)

- この作業は真珠を作るうえでとても重要です。この後行われる「核入れ作業」はアコヤ貝の体内にメスを入れる作業、いわゆる人間で言う「手術」です。手術前には何が必要ですか?「麻酔」ですね。実際には注射を打ったりするわけではないのですが、アコヤ貝を仮死状態のような状態にしてしまう作業が、この「抑制作業」です。貝をそのような状態に仕立てるため「貝の仕立て」とも呼ばれます。
アコヤ貝の受け渡しが終わると、その貝を籠(かご)に詰め込みます。
この作業を抑制(よくせい)作業といいます。
底が深い籠の中に一定量のアコヤ貝を詰め込みます。上のようなほとんど密封された通水性の悪い抑制籠(よくせいかご)とよばれる籠の中にアコヤ貝を詰め込み、海へと戻します。詰め込まれたアコヤ貝は通水性の悪い籠の中でだんだんと仮死状態になっていきます。真珠養殖業者が仕立ての表現を「生かさぬように、殺さぬように」というのはこれが理由です。
- 4月〜7月
- 核入れ作業 (挿核作業・玉入れ作業)
アコヤ貝の体内に核(かく)を挿入する作業が始まります。核とは真珠の元となるもので、ドブ貝という貝の貝殻を削って丸くしたものが使われます。(真珠の見分け方 真珠の大きさの話 参照)この作業は大変技術を要する作業で、一人前になるのには数年かかります。下に核入れの行程をわかりやすく表示してみました。

- 左の作業は「細胞切り」という下準備です。
写真のアコヤ貝は細胞貝(さいぼうがい)といいます。
その細胞貝から、外套膜(がいとうまく)とよばれる部分を切り取ります。
この部分はみなさんの良く知っている貝のヒモの部分です。
この外套膜は、貝の貝殻を作っている部分です。
貝の内側を見ると、とても光っています。実はこの色が真珠の色になります。
この外套膜を核と一緒にアコヤ貝の体内にいれてやることによって、外套膜は核のまわりに真珠層を形成し、真珠を作り出します。

- 「細胞切り」で作られた外套膜のピースは核と一緒にアコヤ貝の体内に挿入されます。通常、貝一つに対して核1つ。貝の大きさによっては2つ入れる場合もあります。だいたい一人が1日に500〜600個の挿核をこなします。
多い人で1日1000個こなす人もいます。

- 左の写真が核入れに使われる道具です。
左から「ひっかけ」「挿入器」「メス」「開口器」
- 適当にアコヤ貝の体内に核を入れているわけではありません。核は外套膜と一緒にアコヤ貝の生殖巣に収められます。そしてアコヤ貝の胎内で長い年月をかけて、あの美しい真珠を生み出します。
まさに「真珠が産まれる」と表現しても良いくらいの神秘的な瞬間です。
- 4月〜7月
- アコヤ貝の養生

- 核入れが終わると、手術の終わったアコヤ貝は人間で言う「リハビリ生活」に入ります。それを「養生」といいます。底の浅い養生籠(ようじょうかご・写真右)にきれいに並べられたアコヤ貝は、海に向かって伸びた木で作られたイカダ(写真左)の下で、傷口が癒えるまで、 体力が回復するまで、波の少ない湾内で約1ヶ月間入院生活を送ります。
- 6月〜8月
- 沖出し(おきだし)

- 約1ヶ月間の養生中、アコヤ貝の胎内では外套膜が細胞分裂を起こし、核の周りを取り囲み、真珠袋(しんじゅぶくろ)といわれる袋状のものを作ります。
そして長い年月をかけて、その袋の内側の核の表面に貝殻の成分である真珠層を積み重ね、あの美しい輝きの真珠を生み出します。
約1ヶ月間の養生の後は、いよいよ社会復帰「退院」です。アコヤ貝は湾の外の漁場に移されます。これを「沖出し」と呼びます。貝によっては養生中に核を吐き出してしまうものもあります。
土居真珠では、貝をレントゲンにかけて、体内に核が入っているかどうかを確認します。その後、ネットに入れ替えられて、流れのある海へと運ばれます。
- 7月〜
- 管理
沖出しで外海に運ばれたアコヤ貝は玉出しの時期までそこで生活をします。その間、私達は何もしないわけではありません。海ですから、アコヤ貝の表面やネットに、フジツボや海藻など、いろいろなものが付いてきます。10日〜2週間に1回それを落としてやる作業がずっと続きます。この作業は「動墳(どうふん)作業」と呼びます。汚れのひどい場合は一度ネットから出して、ひとつひとつ手作業で汚れを落としてあげます。これらの作業を「貝掃除(かいそうじ)」と呼びます。

- 動墳作業、貝掃除は、ただ表面の汚れを落とすだけが目的ではありません。
水圧などでアコヤ貝に刺激を与えることで、真珠層の分泌を促進したりする効果があります。
- 12月〜1月
- 玉出し

アコヤ貝を海から引き上げ、中から真珠を取り出します。玉出しは水温が低いこの時期に行われます。水温が下がると真珠層が引き締まって真珠に強い輝きが生まれるからです。海から引き上げられたアコヤ貝はネットから出され、生きている貝と死んでいる貝とに分けられます。生きている貝はナイフで二つに割られ、貝柱とそれ以外の肉と貝殻に分けられます。

貝柱以外の肉には真珠が入っていますので「肉砕機(にくさいき)」という巨大ミキサーにかけられ、肉と真珠を分離し、真珠だけを取り出します。取り出された真珠は種類別に分けられ選別をされます。

貝殻は決められた貝殻置き場に運ばれ、飼料やラデン細工の材料に利用されます。土居真珠では「真珠化粧品 花真珠」の材料にされます。また、この時期のもうひとつの楽しみがアコヤ貝の貝柱。この時期にしか食べられないとても希少なものです。とても歯ごたえがよく、刺身やフライ、てんぷらなどにして食べます。
- こだわり!
- 土居真珠は「越しもの」です
上記の行程で約10ヶ月くらいの養殖期間です。この行程で出来た真珠を「当年もの(とうねんもの)」といいます。もう一年海の中で育て、次の年の12月に取り出した真珠を「越しもの(こしもの)」といいます。「越しもの」のほうが一年余分に海の中にいますから、そのぶん真珠層が厚くなり、良い真珠が出来る可能性がありますが、アコヤ貝の死亡率は高くなり、真珠が取れたとしても、すべてが良い真珠になるとは限らないため、大変リスクを負う作業となります。そのため、「当年もの」と「越しもの」の両方を作っている業者が多いです。
土居真珠では、より良い品質の真珠を生み出すため、数年前に「越しもの」のみの生産に完全に移行しました。




